エリート弁護士と婚前同居いたします
過去に付き合っていた人を気にしても仕方ないわかっている。過去は過去。
それは何があっても変えられない。その時間があるから今の彼がある。

だけど、日高さんにとって彼はきっと過去じゃない。彼女の想いは今も進行中だ。
同じ人を好きになってしまったせいか、悲しいことにわかってしまう。

私を好きだと彼は言ってくれる。
でも私がもし朔くんの立場ならきっと日高さんを選ぶ。あんなに美人で、昔から一緒にいて、同じ職業で、同じ世界を見つめることができる。
わざわざ私を選ぶ必要なんてない。彼女に勝るものを私が持っているとは思えない。

彼の最寄り駅には溢れんばかりの人がいて賑やかに行き交っているのに、私はたったひとりその場で孤独を感じて立ち竦む。
外気はうだるほどの暑さなのに私の心は冷えきっていた。

結局、その後、彼からは何も連絡がなかった。
瑠衣ちゃんたちと合流し、賑やかな送別会で興に乗じながらも、私の心はヒリヒリと焼けつくような痛みを覚えていた。
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