エリート弁護士と婚前同居いたします
「回りくどい言い方は嫌いなので単刀直入に申し上げます。あなたは彼に相応しくない」
ヒュッと喉が鳴った。同時にああ、やっぱり、という気持ちがわき上がる。少し吊り上がった目を逸らさず真っ直ぐに彼女は私を見据える。
「香月さん、本気で自分が彼の恋人だと思っているの?」
辛辣に彼女が言う。
「それは、日高さんが彼の本当の恋人だということですか……?」
太腿に置いた手にギュッと力を込める。喉がカラカラに乾いていくのに、目の前のアイスティーに手が伸ばせない。
「そうだと言ったらどうするの?」
挑戦的ともとれる眼差しが私をひたと見つめる。だけどその目は動揺しているようにも見えた。
「……わかりません」
正直に答える。
だってわからない。
自分の彼氏だと思っていた人に彼女がいた。そしてその女性に相応しくない、と言われる。私はどうすべきなの?
でも、と私のなかでもうひとりの私が問う。
相応しくないってどうして? 普通なら別れてって言うよね?
迷うような私の態度に気がついたのか、日高さんは艶然と微笑んだ。先程の微かな動揺も感じられない。
「念のために言うけど、私は彼の恋人ではないわ。彼と付き合っていたのは大学時代よ。私と彼は同い年で同じ大学だったから」
答え合わせをするかのように言う。多忙きわまりない職業だというのに、綺麗に手入れされた指で彼女はアイスティーのグラスを引き寄せる。結露がグラスに敷かれたコースターを濡らしていく。
「彼は当時からとても優秀で、皆の憧れだったわ。彼のご両親も弁護士で事務所を営んでいるのよ」
私の知らない彼の姿を彼女は得意気に話す。彼女のうっとりするような眼差しに私はどう答えていいのかわからない。他人事のように彼女の言葉を聞いていた。
ヒュッと喉が鳴った。同時にああ、やっぱり、という気持ちがわき上がる。少し吊り上がった目を逸らさず真っ直ぐに彼女は私を見据える。
「香月さん、本気で自分が彼の恋人だと思っているの?」
辛辣に彼女が言う。
「それは、日高さんが彼の本当の恋人だということですか……?」
太腿に置いた手にギュッと力を込める。喉がカラカラに乾いていくのに、目の前のアイスティーに手が伸ばせない。
「そうだと言ったらどうするの?」
挑戦的ともとれる眼差しが私をひたと見つめる。だけどその目は動揺しているようにも見えた。
「……わかりません」
正直に答える。
だってわからない。
自分の彼氏だと思っていた人に彼女がいた。そしてその女性に相応しくない、と言われる。私はどうすべきなの?
でも、と私のなかでもうひとりの私が問う。
相応しくないってどうして? 普通なら別れてって言うよね?
迷うような私の態度に気がついたのか、日高さんは艶然と微笑んだ。先程の微かな動揺も感じられない。
「念のために言うけど、私は彼の恋人ではないわ。彼と付き合っていたのは大学時代よ。私と彼は同い年で同じ大学だったから」
答え合わせをするかのように言う。多忙きわまりない職業だというのに、綺麗に手入れされた指で彼女はアイスティーのグラスを引き寄せる。結露がグラスに敷かれたコースターを濡らしていく。
「彼は当時からとても優秀で、皆の憧れだったわ。彼のご両親も弁護士で事務所を営んでいるのよ」
私の知らない彼の姿を彼女は得意気に話す。彼女のうっとりするような眼差しに私はどう答えていいのかわからない。他人事のように彼女の言葉を聞いていた。