エリート弁護士と婚前同居いたします
何を考えろというのだろう。早く私から身を引けということなのだろうか。
ぼんやりと夢現な状態で私は帰路につく。今、聞いたばかりの事実を頭と心が消化しきれていない。

私はどこに帰ればいいの?
小さくかぶりを振って足を踏み出す。
日高さんに言われたことを全て鵜呑みにするつもりはない。ただ彼女が言ったことの全部が嘘だとは思えなかった。彼への一途な気持ちと私を相応しくないと言った、彼女の言葉が突き刺さる。

きっとあれは彼女の本心だ。そして私は彼女に言い返すことはできなかった。何ももたない私は彼女にとって認めたくない存在なのだろう。
朔くんのことは好きだ。気づいたばかりのこの気持ちは日増しに膨らんでいく。きっと今まで私が好きになった人のなかで彼を一番に想っていると自信がある。

だけどその重さは日高さんのものとはきっと比べものにならない。そのことが私を弱気にする。
彼女のように長い時間、私は彼を想っていない。想いは時間で比較するものではないかもしれないけれど、想いの強さに自信がもてない。

こんな私が朔くんの彼女でいいの? 朔くんは本当に私が好きなの? どうして?
あんなに素敵な人が近くにいて、あれほど想われているのになぜ私を選んだの?
……お姉ちゃんが好きなの? 日高さんの言っていることが正しいの?

 思っていた以上に私は打ちのめされている。大好きな人を信じる、そんな単純なことがどうしてできないのか、その答えが見つけられない。
< 115 / 155 >

この作品をシェア

pagetop