エリート弁護士と婚前同居いたします
信じていいの?

もうひとりの私が心の中で問いかける。
彼は私から目を逸らさない。しっかりと私を見据える。

握っていた手をそっと彼の頬に添える。一瞬ビクッと彼の表情に緊張が走る。それからすぐに彼は私の手に頬をすり寄せるようにして、自身の大きな手で包み込む。伏せた彼の長い睫毛が震えていた。その姿が胸をうつ。

ああ、やっぱり私はこの人がどうしようもなく好きだ。だってこんなにも胸が痛い。こんなにもこの人の傍にいたくてたまらない。この人の全てが愛しい。
最初の出会いすら覚えていなかったのに、彼は私の心から離れなくなった。それは彼が私のために心を捧げてくれたから。私を諦めずに想っていてくれたから。私を見つけてくれたから。

「……私も朔くんが好き……良かった、お姉ちゃんを好きじゃなくて」
吐き出した言葉は震えていた。はらはらと涙が零れた。
朔くんの目が驚いたように見開かれる。

「当たり前。茜以上に大切な人なんていない。茜だけが好きなんだ」

そう言って彼は私をその胸に閉じ込めた。今ではもう慣れてしまったその体温と鼓動が泣きたくなるくらいに愛しくて安心する。
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