エリート弁護士と婚前同居いたします
未来
『全く、心配をかけすぎよ。最初からちゃんと本人に聞けば良かったのに』

スマートフォンから伝わる詩織の呆れた声。
「ご、ごめんなさい……晃くんにも謝罪を伝えてください」

私はリビングのソファの上で正座をしながら、詩織に謝罪している。詩織の家を出てからの出来事を彼女に報告し終えたところだ。たくさん心配をかけた親友には本当のことをきちんと伝えたかった。

昨夜遅く、誤解を解いて一緒に帰宅した私たちはたくさんの気持ちを伝えあい、初めて一緒に彼の部屋で手をつないで眠った。込み上げる彼への想いは際限がない。緊張もあったけれどただ傍にいたくて、近付きたいと願った。あんなにも意識して悩んでいたのに、今は彼の腕の中にいることが何よりも自然なことに思えた。彼はそんな私を受けとめて、ただ優しくずっと抱きしめてくれた。

彼の香り、体温と息遣い。チョコレート色の甘い眼差しも低めの声も私に触れてくれる大きな手も全てが愛しい。相手を想う気持ちが大きすぎて泣きたくなるという感情を初めて知った。

一緒にいないと切なくて寂しいのに、一緒にいてもドキドキしすぎて胸が苦しい。こんな感情は初めてで慣れない。だけどそんな風に彼に恋ができることはとても幸せだ。

朝起きた時、彼は私を抱きしめてキスをした。
『起きて一番最初に茜を見ることができて嬉しい。これからも一緒に眠ろう』

早朝からキラキラと輝く笑顔で彼は私をさらに虜にする。これ以上は私の心臓が持ちそうにない。
< 136 / 155 >

この作品をシェア

pagetop