エリート弁護士と婚前同居いたします
「そんな、私のほうが朔くんにいつも助けてもらってます。むしろ頼ってばかりです。私は朔くんがいてくれるから幸せです」
いつもと違う先生の雰囲気に緊張しながら返事をすると、先生は穏やかな笑みをもらす。
「ありがとう。朔をよろしくね。アイツは茜ちゃんだけには嫉妬深いし、独占欲も強くて大変だろうけど」
先生の言葉に恥ずかしさがこみ上げる。嬉しいけれど戸惑ってしまう。

もうっ、なんて返事をすればいいの!
そんな私を見て先生はクスクス笑う。絶対からかわれている。
「そうそう、いいことを教えてあげる。朔が絆創膏を持ち歩くようになったのは茜ちゃんが原因なんだよ」
種明かしをするように楽しげに言う貴島先生。

絆創膏って? 

「初めて会った時に絆創膏を私があげたからですか?」
さすが親友、そんな細かいことまでよく知っている。
「うーん、そうだけど……ちょっと違うかな。朔が絆創膏を持ち歩いていたのは茜ちゃんに再会して、自分を好きになってもらうための願掛けだから」
茶目っ気たっぷりに先生が言う。

「が、願掛け!?」
驚く私。
「朔には内緒な。そんな格好悪いことは言えないって隠してたから」
朔に困らされたら切り札にして、と貴島先生は再び笑いながら去っていく。

私は僅かに赤くなった頬を押さえつつ、小さく笑む。
大好きな人に早く会いたくなってきた。
< 141 / 155 >

この作品をシェア

pagetop