エリート弁護士と婚前同居いたします
「ごめんなさい。上尾くんに二度とあなたに迷惑はかけないって約束したのだけど、どうしてもきちんと謝りたくて」
先日カフェで対峙した時とは全く違う、気弱な態度で日高さんが言う。

「俺は日高のお目付け役。日高が暴走しないように。俺がこんなこと言えた義理じゃないんだけど、良かったらひと言だけでも謝らせてやってくれないかな」
神妙な顔つきで佐田さんが申し訳なさそうに言った。チラ、と日高さんを見ると彼女の綺麗な顔が緊張しているのか強ばっていた。

「あの、私、もう気にしていないので……」
彼女にそう告げると、ガバッと私の眼前で日高さんが頭を下げた。
「謝ってすむことじゃないけれど……失礼なことを言ってしまってごめんなさい」
「ひ、日高さんっ、本当にもう、構わないので、頭をあげて」
うろたえて言うと、日高さんがゆっくりと頭を上げた。
頬が紅潮して心なしか目が潤んでいた。これはきっと彼女の本心なのだろう。

「ありがとう、茜ちゃん。ごめんね」
佐田さんまでもが私に謝罪をしてくれる。私は焦って首を横に振る。
「いいえ! ここまでしていただく必要はないので……」
「朔と俺は大学からの付き合いなんだけど、日高と俺は中学からの付き合いでちょっと放っておけなくて。コイツの肩をもつつもりはないし、自己満足な謝罪だけど、させてやりたくてさ」
根は悪い奴じゃないんだ、と困ったように佐田さんが言う。彼はとても優しい人なのだろう。
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