エリート弁護士と婚前同居いたします
私の名前は香月(かづき) 茜、二十七歳。
 肩に届くか届かないかくらいの長さの焦げ茶色の髪に百五十七センチメートルの身長。やや垂れ目がちの二重の瞳のごく一般的な容姿をしている。

 職業は歯科の受付業務。私が勤める来栖デンタルクリニックは都内にいくつかのクリニックがある。私の勤務場所は目黒駅前にある八階建の商業施設の六階にあるクリニックだ。

場所柄のせいか患者さんは、仕事帰りの会社員の方や学生が多い。院長のこだわりで診察室はそれぞれ個室になっている。グレーの壁に淡いベージュと白のせっ器質タイルの床が落ち着いた雰囲気を醸し出す。一日にだいたい八十人ほどの患者さんが来院する。そのためクリニックは大抵混んでいることが多い。

 私は勤務先から電車で二十分程の場所に姉とふたりで暮らしている。実家は東京郊外で、都心に出るには時間がかかるため、私より四歳年上の姉は大学生の時から独り暮らしをしている。私はその姉を追いかけるように大学入学をきっかけに家を出て、一緒に暮らし始めた。

 姉の菫は、とても穏やかで優しい女性だ。私と変わらない身長、髪の長さだというのにまとう雰囲気は全く違うと周囲によく言われる。丸い大きな二重の瞳は常に微笑んでいるようで幼いころから姉に叱られたことはあまりなかったように思う。自分のことよりもいつも妹の私を気にかけて優先してくれる思いやり深い姉。

 そんな姉をずっと見守ってきた男性が五十嵐(いがらし) 侑哉、侑哉お兄ちゃんだ。
実家で暮らしていた頃、私たち香月姉妹のお向かいに住んでいた。いわゆる幼馴染というもので侑哉お兄ちゃんは姉と同い歳だ。それこそ兄弟姉妹のように一緒に育ってきた。

侑哉お兄ちゃんと姉は私より優秀な頭脳のため、高校は特進科だった。ちなみに恐らくギリギリ合格の私は普通科で精一杯。侑哉お兄ちゃんは漆黒の髪に切れ長の二重の瞳、涼やかな顔立ちに落ち着いた雰囲気の持ち主だ。
お兄ちゃんと姉は中学校時代からずっと付き合っていて、お互いの両親も公認のカップルだった。
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