エリート弁護士と婚前同居いたします
「本当に何をしにきたんですか?」

 この人の行動が理解できない。

「会いに来たって言っただろ?」

 輝かしい綺麗な笑顔で彼が言う。この人、こんなに表情豊かな人だったの? 思わずその眩い笑顔に見惚れてしまいそうになる。皆が彼に熱を上げる理由がわかる気がする。

「私に会いに来る用事なんてないですよね?」
 自分で思うよりも無愛想でキツイ声が出る。必死で自分を立て直す。
「あるよ。俺と一緒に暮らそうって言っただろ?」
 ヒュッと喉がなる。
 今日は散々この人に驚かされたけど、これが一番の衝撃だった。
 ギュウッと震えそうになる手を握りしめる。

「じ、冗談を言わないでください」
 絶対にからかっている。どうしてまた、こんなことを言うの。
 衝撃は段々怒りに変わる。
「私をからかうのもいい加減にして」
 私よりはるかに高い位置にある秀麗な顔立ちを睨みつける。怒りのあまり丁寧な言葉遣いが抜け落ちる。

「冗談? お前のほうこそいい加減にしろ」
 感情の読めない低い声が聞こえた。
 言い返そうと口を開いた瞬間、トンと背中を玄関ドアに押しつけられた。彼の長い両腕が私の顔の真横にある。彼の身体に閉じ込められるような態勢に驚く。
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