エリート弁護士と婚前同居いたします
翌日。私の懇願を聞いて早めに帰宅してくれた姉と向かい合って夕食をとった。姉が作ってくれた肉じゃがは本当に美味しかった。
 食後の後片付けを終えてリビングのソファに並んで座る。

「へえ、あの上尾くんがねえ……意外だわ。確かに侑哉とはすごく仲がいいけど」

 ある程度のことは昨夜遅くに帰宅した姉に話していたけれど、改めて詳細を語る。もちろん、彼に渡されたクリアファイルも見せた。姉は興味深そうに私の話を聞いていた。
「本当に? お兄ちゃんもお姉ちゃんも上尾さんを知ってるの?」
念のために姉に確認する。
「ええ、知ってるわよ。同級生だし、卒業してから何回か侑哉と一緒に会ったこともあるし。侑哉からよく話も聞くわ」
姉が自信たっぷりに頷く。その様子は嘘をついているようには見えない。

「上尾さんっていつも自意識過剰で失礼で強引な人なの?」
眉間に皺を寄せて姉に尋ねる。
「私は侑哉ほど親しくはないから、あまりよくは知らないけれど。でもそんなに傲慢な人ではないと思うけど……寡黙でどちらかというと女の子にあまり積極的に関わっていることはなかったわ。むしろ女の子に騒がれて困っているようなイメージが強いわ」
あれだけの容姿だし、と姉が思い出すように話す。

「その人本当に上尾さんなの? お姉ちゃん、誰かと間違えてない?」
イメージが違い過ぎて姉に再確認する。
「失礼ね、間違えてないわよ」
姉が片眉を上げて反論する。
「女子にはすごくモテてたけど、彼女がいたかどうかまでは知らないわ。侑哉や貴島くんなら知ってるかもしれないけど。でも上尾くんは大切な人に嘘はつかない人間だって昔から侑哉はよく言ってたけど」
 それは信用に値する人物だということだろうか。
< 32 / 155 >

この作品をシェア

pagetop