エリート弁護士と婚前同居いたします
「そんな上尾くんが、どうでもいい相手にこんなに丁寧なことをするかしら? しかもわざわざ会いに来てくれたんでしょ?」
含みをもたせた姉の言葉に私は再びうつむく。
姉に彼から気持ちを告白されたことは話していない。気恥ずかしさもあるし、自分自身が彼の言葉をまだ信じ切れていないせいもある。
「茜のこと、特別大事に想ってくれているような気がするけど?」
普段おっとりしているのに、そんなところだけは鋭い姉が核心に迫る。
「そ、そんなことないよ! ただの気まぐれでしょ!」
苦しまぎれに言い訳する。頰が熱い。
「そうね、上尾くんの気持ちは上尾くんにしかわからないし」
意外なくらいあっさりと姉が引き下がる。私にクリアファイルを渡しながら姉がさらに言葉を続ける。
「このまま、あまり家事が得意ではない茜をひとりでここに置いていくことはできないし、私も心配なの。上尾くんのことはあまり知らない人で納得できないこともあるかもしれないけれど、冷静に考えてみるのもいいんじゃない? 信用はできる人だと思うわよ」
姉の真剣な声に私はうなだれる。
あまり知らない人、というのは確かに気になるけれど、姉の言うとおりだとは思う。
信用していないわけじゃない。
ただどうして赤の他人の私にそんな好条件を出して同居を誘うのかわからない。好きだから、と言われた。けれど、ただそれだけでそこまでするものだろうか?
彼ならそれこそ相手は選びたい放題だろうに。優秀な頭脳をもつ人が考えることはよくわからない。
姉のことだ。きっと私がこの同居を受けても断っても何も言わないと思う。けれど断ったら姉は私の同居相手が見つかるまで大阪に引越しはしないと言いそうだ。
含みをもたせた姉の言葉に私は再びうつむく。
姉に彼から気持ちを告白されたことは話していない。気恥ずかしさもあるし、自分自身が彼の言葉をまだ信じ切れていないせいもある。
「茜のこと、特別大事に想ってくれているような気がするけど?」
普段おっとりしているのに、そんなところだけは鋭い姉が核心に迫る。
「そ、そんなことないよ! ただの気まぐれでしょ!」
苦しまぎれに言い訳する。頰が熱い。
「そうね、上尾くんの気持ちは上尾くんにしかわからないし」
意外なくらいあっさりと姉が引き下がる。私にクリアファイルを渡しながら姉がさらに言葉を続ける。
「このまま、あまり家事が得意ではない茜をひとりでここに置いていくことはできないし、私も心配なの。上尾くんのことはあまり知らない人で納得できないこともあるかもしれないけれど、冷静に考えてみるのもいいんじゃない? 信用はできる人だと思うわよ」
姉の真剣な声に私はうなだれる。
あまり知らない人、というのは確かに気になるけれど、姉の言うとおりだとは思う。
信用していないわけじゃない。
ただどうして赤の他人の私にそんな好条件を出して同居を誘うのかわからない。好きだから、と言われた。けれど、ただそれだけでそこまでするものだろうか?
彼ならそれこそ相手は選びたい放題だろうに。優秀な頭脳をもつ人が考えることはよくわからない。
姉のことだ。きっと私がこの同居を受けても断っても何も言わないと思う。けれど断ったら姉は私の同居相手が見つかるまで大阪に引越しはしないと言いそうだ。