エリート弁護士と婚前同居いたします
そう、彼も言っていた。二人の結婚を邪魔するつもりなのかと。

今、明らかにふたりの足かせになっているのは私だ。 今まで、本来なら侑哉お兄ちゃんと同棲することもできたのに、それをせずにずっと私を見守って一緒に暮らしてくれた姉。彼と暮らすことで姉の心の負担が軽くなるなら、恩返しに少しでもなるなら、それは必要なことなのかもしれない。

 それに彼の提案を受け入れることでふたりの結婚を祝福しているということを証明できる。同居して、彼が何を考えているのか、調べることもできる。

 悔しいけれど、彼と姉の言うとおりだ。私は家事も姉ほど器用にはこなせないし、一カ月やそこらで仕事もあるのに急激にスキルアップなんてできない。かといって家事も分担してくれるような私の望む同居相手なんてなかなか見つからない。実家にも戻れない、ならばこの提案は受け入れてみるべきなのかもしれない。

「そうだね……前向きに考えてみる」
 私の声の響きに何かを感じたのか、姉はそれ以上何も言わずに頷いた。
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