エリート弁護士と婚前同居いたします
翌日、私は家を出る前に、彼に素っ気ないショートメールを送信した。
【同居の件、お願いしようと思います。詳細を教えてください】
色気も何もないメール。それでも昨夜何時間も考えて作成したものだ。
緊張する必要なんてないし、今さら取り繕ったところでどうしようもない。そう思うのにあれこれ考えてしまう自分がいて、そんな自分を振り切りたくて送信した後、すぐにスマートフォンをバッグに入れた。
勤務先に着いていつものルーティンワークを開始する。いつもと変わらない朝礼。先生方へのカルテの準備。今日は普段よりも来院患者さんが多く、予約も埋まっている。問い合わせの電話もひっきりなしに鳴り、忙しかった。けれども今日はその忙しさが有難かった。お昼休憩もバタバタと皆で交代でとり、スマートフォンを手にすることは意図的に避けた。
彼から返事が来ているかもしれないと余計なことをあれこれ考えたくない。
「お先に失礼します」
まだ残っている同僚に挨拶をする。残業が終わり、瑠衣ちゃんとクリニックを出たのは午後九時前だった。お腹が空いたなあ、とぼんやり思う。
「茜さん、本気なんですか?」
私と同じくらい忙しい一日を過ごしておきながらも、疲れの見えない顔で瑠衣ちゃんが尋ねた。彼女には先程ロッカールームで着替えをしている時に彼との同居についておおまかなことを話した。
「本気だよ、だって背に腹は代えられないでしょ」
素っ気なく話す私に彼女は七センチメートルのピンヒールをカツンと鳴らして抗議する。
駅までの道は私たちのように仕事帰りの人で混雑していた。
「そのたとえ、おかしくないですか? 政略結婚じゃないんですから」
「そうだけど、だってもう苦手意識しかないの。私が姉の結婚を邪魔しようとしてるって思ってるみたいだし、あの人、何を考えているのか全く理解できない」
【同居の件、お願いしようと思います。詳細を教えてください】
色気も何もないメール。それでも昨夜何時間も考えて作成したものだ。
緊張する必要なんてないし、今さら取り繕ったところでどうしようもない。そう思うのにあれこれ考えてしまう自分がいて、そんな自分を振り切りたくて送信した後、すぐにスマートフォンをバッグに入れた。
勤務先に着いていつものルーティンワークを開始する。いつもと変わらない朝礼。先生方へのカルテの準備。今日は普段よりも来院患者さんが多く、予約も埋まっている。問い合わせの電話もひっきりなしに鳴り、忙しかった。けれども今日はその忙しさが有難かった。お昼休憩もバタバタと皆で交代でとり、スマートフォンを手にすることは意図的に避けた。
彼から返事が来ているかもしれないと余計なことをあれこれ考えたくない。
「お先に失礼します」
まだ残っている同僚に挨拶をする。残業が終わり、瑠衣ちゃんとクリニックを出たのは午後九時前だった。お腹が空いたなあ、とぼんやり思う。
「茜さん、本気なんですか?」
私と同じくらい忙しい一日を過ごしておきながらも、疲れの見えない顔で瑠衣ちゃんが尋ねた。彼女には先程ロッカールームで着替えをしている時に彼との同居についておおまかなことを話した。
「本気だよ、だって背に腹は代えられないでしょ」
素っ気なく話す私に彼女は七センチメートルのピンヒールをカツンと鳴らして抗議する。
駅までの道は私たちのように仕事帰りの人で混雑していた。
「そのたとえ、おかしくないですか? 政略結婚じゃないんですから」
「そうだけど、だってもう苦手意識しかないの。私が姉の結婚を邪魔しようとしてるって思ってるみたいだし、あの人、何を考えているのか全く理解できない」