エリート弁護士と婚前同居いたします
駅に直結している駅ビル入口のすぐ近くに佇む長身の男性。小さな顔はうつむき、スマートフォンを操作しているので、はっきりとは見えない。けれど周囲を通り過ぎる女性たちがチラチラ振り返っているのを見れば、その注目を一身に集めていることはわかる。
「上尾さん……」
思わず呼んでしまった名前。この距離でこの声の大きさで聞こえるわけがないのに、彼は顔を上げた。彷徨う彼の視線が私と絡む。
「香月!」
遠目にも彼が笑ったのが見えた。どんどんこちらに近づいてくる。
……どうしてそんな笑顔を見せるの。
「やっぱり上尾さん。私の観察力、褒めてほしいですね。あの行動力は本気で獲物を捕らえにきてますよ。じゃあ私はお先に失礼しますから茜さん、頑張ってくださいね」
瑠衣ちゃんがそっと私に耳うちする。
何を頑張るの! 獲物ってどういうこと!?
「え、ちょ、ちよっと瑠衣ちゃん! 私も一緒に帰る!」
追いかけようとする私にしっかり者の後輩が容赦なく言う。
「ダメですよ。新居の話きちんと聞いてきてください! で、私にイケメンエリート弁護士の友達を紹介してください」
そう言って彼女が私を前にぐいっと押し出す。
「上尾さん、茜さんをお願いします」
「ああ。えっと、君は確か……」
私の正面に立った上尾さんが瑠衣ちゃんに話しかける。
「深見瑠衣です。茜さんと同じ職場の後輩です」
可愛い笑顔を浮かべる後輩に彼が魅力的な笑みで自己紹介をする。
「上尾朔です。香月がいつもお世話になっています」
「ちょっと、どうしてあなたがそんな保護者みたいな挨拶をするの!」
意味がわからず憤慨する私。
「上尾さん……」
思わず呼んでしまった名前。この距離でこの声の大きさで聞こえるわけがないのに、彼は顔を上げた。彷徨う彼の視線が私と絡む。
「香月!」
遠目にも彼が笑ったのが見えた。どんどんこちらに近づいてくる。
……どうしてそんな笑顔を見せるの。
「やっぱり上尾さん。私の観察力、褒めてほしいですね。あの行動力は本気で獲物を捕らえにきてますよ。じゃあ私はお先に失礼しますから茜さん、頑張ってくださいね」
瑠衣ちゃんがそっと私に耳うちする。
何を頑張るの! 獲物ってどういうこと!?
「え、ちょ、ちよっと瑠衣ちゃん! 私も一緒に帰る!」
追いかけようとする私にしっかり者の後輩が容赦なく言う。
「ダメですよ。新居の話きちんと聞いてきてください! で、私にイケメンエリート弁護士の友達を紹介してください」
そう言って彼女が私を前にぐいっと押し出す。
「上尾さん、茜さんをお願いします」
「ああ。えっと、君は確か……」
私の正面に立った上尾さんが瑠衣ちゃんに話しかける。
「深見瑠衣です。茜さんと同じ職場の後輩です」
可愛い笑顔を浮かべる後輩に彼が魅力的な笑みで自己紹介をする。
「上尾朔です。香月がいつもお世話になっています」
「ちょっと、どうしてあなたがそんな保護者みたいな挨拶をするの!」
意味がわからず憤慨する私。