エリート弁護士と婚前同居いたします
「カンパーイ」

 グラスを掲げてご機嫌にビールを飲む。運ばれてきた大好きな焼き鳥に舌鼓をうち、お腹も落ち着いてきたところで、彼女が口を開いた。
「思ったよりも元気そうじゃない、茜」
「うん、まあ、そうなんだけど」
 グラスをコトンとテーブルに置きながら口ごもる私。

「何、極上のイケメンエリートのこと? 問題でもあるの?」
ほんの少し口角を上げながら、興味深そうに詩織が私に尋ねる。
「問題っていうか……」
「イビキがうるさい、性格が悪い、とか?」
 綺麗にピンクベージュのネイルが施された指を折りながら親友が言う。
「違う!」
 慌てて否定する私。

「性格が悪いっていうか、若干強引な感じは否めないけど……」
 ぼそっと小さな声で付けくわえる私に、詩織が苦笑する。
「まあねえ、同居までの経緯を考えたらそうよね」
「だけど、すごく思いやりがあるの。多忙なのにできるだけ平日は私と食事をしようとしてくれるし、家事だって当番制にしてくれる。私の話も意見もきちんと聞いてくれて、話をしていると時間があっという間にすぎていくし」
「しかもイケメンだし、弁護士だし、家賃は無料だし、告白されたし?」
 詩織が面白そうに笑いながら後を続ける。

「ちょっと、詩織! それは関係ないの!」
 カアッと真っ赤になって叫ぶ私。
「何よ、本当のことでしょ。茜、顔が真っ赤よ。酔ったわけじゃないでしょ?」
 彼女が頬杖をつきながら指摘する。無言で彼女を睨む。
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