エリート弁護士と婚前同居いたします
「だってこんなのただの堂々巡りじゃない。いい、茜? 片想いはひとりでできるけど、恋愛はひとりじゃできないの。まさか、いつか上尾さんが私の心の葛藤に気づいてくれる、なんて甘い考えをもってるんじゃないでしょうね?」
綺麗にマスカラが塗られた目で彼女が私を睨む。図星だし、その声が恐い。黙り込む私に彼女は溜め息をつく。
「もう、茜ってばどれだけ相手に期待してるのよ。そんなの重いだけでしょ。自分は伝える努力ひとつしないで相手に気づいてもらうのを待つだなんて。上尾さんは神様じゃないの。茜が考えていること全てを理解できるわけがないでしょ」
言われていることが正論過ぎて何も言い返せない。
わかっている。何もかも理解してもらえないなんてことも。私自身、彼のことを全て理解しているかと言われたらその答えは否だ。
「だけど知り合ってからの時間が短すぎるでしょ?」
言い訳がましく言う私に、彼女は鋭い視線を向ける。お酒が入ってるせいか、いつにもまして口調が厳しい。
「あのね、恋は落ちるものなの。落ちるのは一瞬でしょ?」
妙に説得力のある言い方をする詩織。
「じゃあ聞くけど、茜。貴島先生のこと、どれだけ知ってる? 好きな女性のタイプ、好きな色、初恋の相手、知ってる?」
詩織は私の勤務先で定期健診を受診しているため、貴島先生とも顔見知りだ。
「それは……」
貴島先生って何色が好きだったっけ? 普段青色のものをよく持っているから青が好きなのかな?
改めて問われるとわからない。
「茜、貴島先生と一緒に勤務して何年になる?」
真顔で詩織が私に問う。
「三年くらい?」
貴島先生は私が勤務している来栖クリニックのほかの場所から異動してきた。記憶を手繰り寄せつつ答える。
「三年間、ほぼ毎日のように顔を合わせていても知らないんでしょ?」
彼女の静かな言葉が胸に刺さる。詩織は何が言いたいのだろう。
「貴島先生は茜にとって恋愛対象じゃないから比較にはならないかもしれないけど、異性でしょ? 自分が興味をもって相手を知ろうとしなくちゃ、どれだけ一緒の時間を過ごしたところで同じなの」
綺麗にマスカラが塗られた目で彼女が私を睨む。図星だし、その声が恐い。黙り込む私に彼女は溜め息をつく。
「もう、茜ってばどれだけ相手に期待してるのよ。そんなの重いだけでしょ。自分は伝える努力ひとつしないで相手に気づいてもらうのを待つだなんて。上尾さんは神様じゃないの。茜が考えていること全てを理解できるわけがないでしょ」
言われていることが正論過ぎて何も言い返せない。
わかっている。何もかも理解してもらえないなんてことも。私自身、彼のことを全て理解しているかと言われたらその答えは否だ。
「だけど知り合ってからの時間が短すぎるでしょ?」
言い訳がましく言う私に、彼女は鋭い視線を向ける。お酒が入ってるせいか、いつにもまして口調が厳しい。
「あのね、恋は落ちるものなの。落ちるのは一瞬でしょ?」
妙に説得力のある言い方をする詩織。
「じゃあ聞くけど、茜。貴島先生のこと、どれだけ知ってる? 好きな女性のタイプ、好きな色、初恋の相手、知ってる?」
詩織は私の勤務先で定期健診を受診しているため、貴島先生とも顔見知りだ。
「それは……」
貴島先生って何色が好きだったっけ? 普段青色のものをよく持っているから青が好きなのかな?
改めて問われるとわからない。
「茜、貴島先生と一緒に勤務して何年になる?」
真顔で詩織が私に問う。
「三年くらい?」
貴島先生は私が勤務している来栖クリニックのほかの場所から異動してきた。記憶を手繰り寄せつつ答える。
「三年間、ほぼ毎日のように顔を合わせていても知らないんでしょ?」
彼女の静かな言葉が胸に刺さる。詩織は何が言いたいのだろう。
「貴島先生は茜にとって恋愛対象じゃないから比較にはならないかもしれないけど、異性でしょ? 自分が興味をもって相手を知ろうとしなくちゃ、どれだけ一緒の時間を過ごしたところで同じなの」