エリート弁護士と婚前同居いたします
「どうしよう、詩織! 私、朔くんが好き!」

 アルコールの力もあるのか大声で口走ってしまう。
 彼女はアハハと豪快に笑う。
「だろうと思った。やっと自覚した? 本当に強情なんだから。私はさっき茜に上尾さんんの印象を聞いた時点でわかってたけどね」

「えっ、なんで!!」
 思わず前のめりになって詩織の顔を凝視する。私の親友はどこまでお見通しなんだろう。
「だって茜、私に説明してくれた彼の性格って、茜じゃなきゃわからないことばかりなんだもん。外見や職業、誰が見てもわかる彼の特徴じゃなくて彼をきちんと見なくちゃわからないことばかりを言ったでしょ?」
 彼女に言われて私は先程の会話を思いだす。そう、確かに私は彼の人となりを彼女に説明した時、職業や外見は言わなかった。

「でもそれは彼のことは元々詩織に説明しているから、省略しただけで」
 口ごもる私の頰を彼女が綺麗な指で軽くつねる。
「馬鹿ね、無意識にってところが重要なの。上尾さんの外見や職業しかみていなかったらいくら私に説明していようがそのことを一番に言うわよ。でもそれって結局彼に付随している条件しかみていないってことよ」
 茜は違ったでしょ、と親友は優しい笑みを浮かべた。私は恥ずかしくなってうつむく。

「ねえ、そう言えば今日は上尾さんは?」
 思い出したように詩織が私に尋ねた。
「ああ、遅くなるって連絡をもらった」
 何気なく返事をする私。
「そうなの? 私とご飯に行くってちゃんと言った?」
 なぜか焦ったように確認する詩織。

「え? してないけど」
 店員が絶妙のタイミングで届けてくれたウーロン茶を一口飲む。冷たくて火照った身体に気持ち良く染み渡る。
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