エリート弁護士と婚前同居いたします
告白
会計を済ませて店の外に出た。瞬間ブワッと生温い残暑の風が吹く。
「さっきまで快適な温度だったのにね」
詩織が肩をすくめる。
「上尾さんは?」
私は無言で首を横に振る。何かあったのなら連絡をくれるだろうけれどスマートフォンにもなんの連絡もない。数分前は元気な声を聞いたのだから心配するなんておかしいかもしれないけれど、落ち着かない。朔くんはずっとこんな気持ちを抱いていたのだろうか。
「大丈夫よ、そんなに時間経ってないでしょ。そうだ、折角の機会だから茜の好きな人の顔を一目見てから帰るわ」
私の気持ちを読んだかのように詩織が言った時、背後から低く威圧感の漂う声がした。
「茜!」
振り返るとスーツ姿の彼がいた。いつもと変わらない見惚れてしまうくらいに完璧な容貌。
「朔くん……」
小さくその名を呟く。
いつもきちんと整っているサラサラの髪は少し乱れていて、スーツのネクタイも外されていた。綺麗なチョコレート色の瞳が痛いくらいに真っ直ぐ私を見据える。コツコツと大きな歩幅で彼が私に近付いて、ギュウッと私をその胸に閉じ込めた。その力が痛いくらいだった。微かに香る汗の臭い。
「心配するだろ! 遅くなるならちゃんと連絡しろ!」
いきなりの大声に驚く。彼がこんなに声を荒げるのをはじめて聞いた。そこには彼の心配と想いが込められていた。
「ごめん、なさい」
反省の気持ちを込めて彼に謝る。普段だったらこんな場所で抱きしめられたらうろたえて逃げ出したくなるのに、今はそんなことが全く気にならなかった。
「さっきまで快適な温度だったのにね」
詩織が肩をすくめる。
「上尾さんは?」
私は無言で首を横に振る。何かあったのなら連絡をくれるだろうけれどスマートフォンにもなんの連絡もない。数分前は元気な声を聞いたのだから心配するなんておかしいかもしれないけれど、落ち着かない。朔くんはずっとこんな気持ちを抱いていたのだろうか。
「大丈夫よ、そんなに時間経ってないでしょ。そうだ、折角の機会だから茜の好きな人の顔を一目見てから帰るわ」
私の気持ちを読んだかのように詩織が言った時、背後から低く威圧感の漂う声がした。
「茜!」
振り返るとスーツ姿の彼がいた。いつもと変わらない見惚れてしまうくらいに完璧な容貌。
「朔くん……」
小さくその名を呟く。
いつもきちんと整っているサラサラの髪は少し乱れていて、スーツのネクタイも外されていた。綺麗なチョコレート色の瞳が痛いくらいに真っ直ぐ私を見据える。コツコツと大きな歩幅で彼が私に近付いて、ギュウッと私をその胸に閉じ込めた。その力が痛いくらいだった。微かに香る汗の臭い。
「心配するだろ! 遅くなるならちゃんと連絡しろ!」
いきなりの大声に驚く。彼がこんなに声を荒げるのをはじめて聞いた。そこには彼の心配と想いが込められていた。
「ごめん、なさい」
反省の気持ちを込めて彼に謝る。普段だったらこんな場所で抱きしめられたらうろたえて逃げ出したくなるのに、今はそんなことが全く気にならなかった。