エリート弁護士と婚前同居いたします
アルコールが入っていたせいもあってか、身体の力が抜けてしまった私を彼は大事そうに横抱きにして、私の部屋まで運んでくれた。ベッドに腰かけさせてもらい、彼は私の右隣に腰かける。

明日もお互い仕事があるし、今の私の記憶は若干怪しいから、話は明日の夜にきちんともう一度しよう、と彼らしい真面目な口調で言われた。お風呂に入る時は溺れたら困るから夜中でもきちんと教えて、と保護者のように諭された。

その間もずっと、溶けてしまうんじゃないかと思うくらいに甘い瞳で見つめられて、顔の火照りはずっとおさまらなかった。

「おやすみ、茜」
　美麗な顔に優しい笑みを浮かべて言う。私の頬に優しくキスをして部屋を出て行った後も、私はこれが現実とは思えずに呆然としていた。

　結局、何度も詩織と別れた後からの出来事を反芻しては赤面するという動作を繰り返し、悶絶しそうな羞恥を必死で押し隠した。お風呂に入ることを告げようと自室を出て彼の部屋に向かおうとしたところ、リビングから明かりがもれていることに気づく。

リビングに彼がいるのかと思って、足を向けると彼がソファのひじ掛けに頬杖をついたままうたた寝をしていた。
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