エリート弁護士と婚前同居いたします
恋敵
私が彼に告白してから半月ほどが過ぎた。カレンダーの日付は九月に変わっても残暑は厳しい毎日が続いている。秋めいた装いをするにも、暑さのせいでまだ八月なのかと錯覚しそうなくらい、街には軽装で明るい色合いの服に身を包んでいる人が多い。

私たちの同棲は変わらない。
変わったのは私が素直にこの暮らしを『同棲』だと認めるようになったこと。私たちの距離がとても近くなったこと。

そして、毎朝の『大好き』の言葉をお互いが口にするようになり、彼からのキスが加わった。私に向けてくれる甘い視線、見惚れそうになる優しい笑み、その全てが毎日私の心を落ち着かなくする。

彼は相変わらずとても多忙だ。休日は一応土曜、日曜に設定はされているけれど、ほぼどちらかは出勤していることが多々ある。

そんな毎日なのに彼は自分のことよりも私のことをいつも気にかけてくれる。私の心の機微にもすぐに反応する。付き合うようになってからその様子はますます顕著になっている。

『私は大丈夫だから、自分のことを一番に考えて』
何度言っても彼は私の世話を焼きたがる。一見冷酷に見える彼が本当はこんなにも優しく感情豊かな人だと知ったらきっと皆驚くだろう。何より私が一番戸惑っているのだから。

『好きな人に気持ちを尋ねたくなるのも、ずっと一緒にいたいと思うのも自然なことだろ?』

私の恋愛観は重いと言われていることを告白した時、彼はなんでもないことのようにそう言った。彼のその言葉は私に大きな安心感をもたらした。

『俺は茜に気持ちを伝えたいし、いつも伝えてほしいと思っているよ。むしろ重いと思われるくらい、茜に想ってもらいたいな』
いつも通りの眩い笑顔で、冗談めかして言う彼の気持ちが嬉しくて、泣きたくなった。

瑠衣ちゃんに付き合っていることを報告して、彼の台詞を伝えた時は驚いていた。
『もう運命の人ですね。茜さん、上尾さんにフラれたらもう彼氏はできないですよ』
応援されているのか、けなされているのかわからない。
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