ラブレター
実家から「荷物が届いている」と連絡が入ったのは、三十歳の誕生日を迎えた翌日のことだった。
仕事帰りに取りに行って、送り主の名前を見たら、絶句した。
送り主は、恋人のお姉さんだった。
微かに震える指先で小包みを開けると、中には水色の便せんと、さらに小さな包みが入っていた。
まず初めに水色の便せんを開くと、それは彼のお姉さんからの手紙で「あゆみちゃんの誕生日に送るように弟から頼まれていた」旨と、お姉さんの近況や考えが書かれていた。
「弟が亡くなって七年。自分の人生を歩んでいるであろうあゆみちゃんに、今更過去を振り返るようなものを送ってもいいものか悩んだけど、弟の最期の願いを叶えてやりたかったの」
少し乱れた字で書かれたその一文には、彼女の葛藤が全て詰まっている気がした。
七年。あれからもう七年も経ったのか。
七年前、付き合っていた彼が亡くなった。元々持病があって、出会った頃から入退院を繰り返していたけれど、まさか二十三歳で逝ってしまうとは思わなかった。
中学生の頃に出会ったのに、当時は喧嘩ばかりで。付き合い始めたのはハタチになってからだから、結局恋人としてちゃんと一緒に居られた期間は、二年ほどしかない。
それでも彼の存在は大きくて、あれ以来誰とも付き合うことができないまま、三十歳を迎えてしまった。
彼の懸念は当たったのだ。わたしは彼のことを気にして、前に進めないでいた。大事な彼の七回忌にも、仕事で行けなかった。いや、行けなかったのではない。行かなかったのだ。行くことができなかったのだ。彼のいない世界を、身近に感じたくなかったのだ。