叶わぬ恋と分かれども(短編集)
純平と一真。今まで同じ店で働くスタッフとしてしか見てこなかったし、意識なんてしたことがなかったけれど、男として改めて見ると、それはそれは魅力的だと思った。
クールで背が高くて力持ち。好きな作家や映画も同じで物知りで、一緒にいるとすごく楽だと感じる純平。
趣味は全く違うけれど、いつでも明るくて楽しませてくれて、嫌なことがあっても笑って励ましてくれる一真。
それぞれ良いところがたくさんある。そんなふたりにこんなことを言われ、わたしは一体どうしたら……。
立ち尽くすわたしと、プレゼントを差し出したまま動かないふたりに、声をかけたのは店長だった。
「とりあえず、遅番のふたりのために夕礼始めていいかな?」
言われてふたりは少しだけ顔を上げ、困惑したように店長を見遣る。いや、困惑しているのは明らかに店長とわたしだ。あと村山さんは眉間に皺を寄せ、ドン引き中のドン引き顔だった。
「もしかして、どっちも嫌?」と一真。
「いやっていうか……」
「嫌なんだろ?」と純平。
「いやじゃないけど、ふたりを一人の男として見たことがなかったから……」
それを聞いて純平は、ため息まじりでプレゼントを引っ込める。
「分かった、和奏」
「はい?」
「今日、仕事終わったら、空いてる?」
「空いてるけど……」
そして純平は、こんな提案をしたのだった。