叶わぬ恋と分かれども(短編集)
そんな、アルバイト生活三ヶ月目。十二月初旬のことだった。
店長が朝礼で「もうすぐクリスマスだから、プレゼント用の包装サービスを始めようと思う」と言った。
え、古本屋でプレゼント用の包装? 中古品をプレゼント? そんなの有り? そういうものなの?
不思議に思って質問したら、系列店で包装サービスをしているのは、うちと隣町の店舗――昔店長と一緒の店で働いていた武田さんが店長を務める店だけらしい。
他のスタッフたちは「面白そう」と乗り気だったけれど、私は不安でいっぱいだった。
プレゼント用の包装だから、ちゃんと綺麗に包まなくてはならない。でも包装なんて生まれてこの方やったことがない私に、果たしてそれができるのだろうか……。
その日の退勤後、ちょうど店長が休憩室にやって来たから「包装はしたことがありません」と白状したら、彼は優しく笑って「大丈夫、ちゃんと教えるし、そんなに頻繁に頼まれるわけじゃないから」と言った。
「頻繁に頼まれるわけじゃないなら、包装サービスする意味あります?」
疑問を投げかけると、店長はやっぱり優しく、声を出して「あはは」と笑って答えてくれた。
「まあプレゼントを中古で、っていうのは多くないけど、そんなに少なくもないんだよ。新品を買う予算が足りないだとか、中古でしか買えない古いゲームや本を送りたいだとか」
「まあ、確かに……」
「包装サービスを初めてやったのは、もう六年くらい前かな」
「そんな前から?」
「うん、当時働いてた子が企画して、試験的にやってみたんだ。そしたらけっこう包装を頼むお客さんがいて。しかもお客さんたちがみんな嬉しそうにお礼を言ってくれるから、こっちまで嬉しくなっちゃってね」
「大成功だったんですね」
「うん。お客さんたちも、まさか古本屋で包装してもらえるとは思ってなかっただろうし、その子が経験者で上手かったってのもあるけどね」
「う……私にできるか、さらに不安になりました」
「あはは、大丈夫だって。俺も最初は全くできなかったけど、ちゃんとその子に習ったら綺麗に包めるようになったし」
「はあ、はい……」
「どうしても無理そうなら、代わりに俺らが包むから」
それは女として情けない気がする……。包装を男性に、しかも片想いしている相手に頼むなんて……。
だから私は「頑張るので手取り足取り教えてください!」とお願いするのだった。