恋駅


……… き、気まずい。


隣に男子高校生がいて
ニコニコしながら、
でもちょっぴりオドオドしながら私を見てて。


電車、早く来ないかな………。


できることなら、
早くこの場から逃げ出したい。



「あ、の。
昨日の件ですけど
返事とかはまだいいです。
どうせ、今もらったって無理だろうし」


「あ、うん……」



彼の耳が赤い。


もしかして、結構恥ずかしがり屋………?


しかも、やっぱり
昨日の話を掘り返してくる。



「で、でも!
これから仲良くしていきたい気持ちはあって
よかったらなんですけど
名前、教えていただけませんか……?」


「あ……えと………」


「ダメ、でしょうか……?」



明らかにしゅん、と凹んでしまった彼。


幻かな……
彼の頭の上、犬の耳が見えるようだよ。


………あーーもう
そんな顔されたら、
私も冷たい人間じゃないから
同情、しちゃうじゃないか。



「……夏川」


「………へ?」


「夏川芹那」


「せ、芹那さん………!」



い、いきなり下の名前!?


でも、ほんとに嬉しそうに笑うから
まぁいいか……。


私も自然と笑っていた。

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