恋駅
「あ、芹那さん!
電車来ましたよ!」
「うん、空くんもこれに乗るの?」
「はい!いつも同じ車両でしたよ?
気付きませんでした?」
……ごめん、全然気にしてなかった。
「……その顔は……」
「ごめんって!
だって人多いじゃん!顔なんて見てないよ!」
「まぁ、そうですよね」
ふふっと空くんは笑う。
到着した電車に
人に流されるようにして 乗り込み、
ドア付近に寄りかかる態勢に。
「へへっ。
芹那さんと一緒に登校だ!」
無邪気な空くんは
ギュウギュウ詰めで、もわっ、むわっ、と
満員電車独特の嫌な空気感の中でも
にっこり爽やか笑顔を浮かべている。
そんなに私といるのが嬉しいのかと思えば、
なんか、私も素直に嬉しいというか
ほっこりした気分になる。
………なんだ、身構えて損した。
最初は見ず知らずの女に
いきなり一目惚れしたと告白して来て
なんだコイツ、って
正直引いてる部分もあったけど
ねぇ。全然いい子じゃん。
「昨日一緒にいた友達は?
待ってなくていいの?」
「あーー。
あれはたまたまです。
基本は1人で通学してます」
「そうなんだ」
「本当は昨日も
芹那さんと同じ電車に
乗るつもりだったんですけどね」