恋駅
正直者?純粋?ピュア?素直?
何が彼にぴったりなのかわからないけど
空くんの言動には
なんか、心が動かされる。
こう、胸があったかくなるんだ。
長袖で捲っているワイシャツから伸びる
細くて長い腕。
十代だからっていうのもあるのか、
肌にハリがあって若々しくて。
まぁ、私もまだまだ若いんだけど。
でも、こうして年下の子と並ぶと
自分の老け具合がよくわかったり……。
「芹那さん……大丈夫ですか?
苦しくないですか?」
「うん。平気だよ」
満員電車。
揺れるたびに密着したり、離れたり。
隣のおじさんの肘が邪魔だったり
近くにいる学生の声がうるさかったり
首垂れて爆睡している人もいるし
そんな空間で
至近距離に自分を好きだという人がいるって
なんだか不思議な感じがする。
……それから、会社のある駅までの間
空くんとの会話を楽しんでいた。
別にものすごく盛り上がったとか
話しが合うとか
そういうのじゃないんだけど
普通に聞いてて楽しかったりして。
しまいには
「LINE交換しましょっ!」
という空くんの言葉に断るわけもなく
狭い中、限られたスペースで腕を動かして
スマホを取り出しては、ふるふる。