恋駅


「よく社内でも噂になってるわよー?
お似合いだとか、
本当は出来てるんじゃないか、とか」


「やだぁ、
そんなんじゃないですってー!」



赤リップが印象的で目に入る。

クスリと上品に笑った瑠夏さんに
私は笑って首を横に振る。



「私達は同期ですもん。
仲良しっていうか、もう、腐れ縁?」


「あら。そうなのね。
つい2人がお似合いだったものだから……」


「もう、瑠夏さんったら!」



ご冗談を、と笑い飛ばす私の横で
何故だか雪はそっぽを向いて
仕事始めの準備に取り掛かっていた。


……前からそうだ。


雪は瑠夏さんのことを
やたら煙たがる。


優しくて美人で最高の先輩で
私からすればいい人だと思うんだけど
雪は苦手なのかな……?



「雪くん。
この資料、
後で見ておいてくれてもいいかしら?」


「ああ、はい」



スタスタと雪の元へ行き
資料を手渡す瑠夏さんに
失礼にも目を合わせないまま
頷いて、受け取る雪。



「じゃあ、仲良しなお2人さん。
今日も頑張りましょうね」


「はい!」


「……………」



ふふっと微笑んだ瑠夏さんは
雪の態度をあまり気にしている様子はなく
そのまま自分のデスクへと戻って行く。


私達の場所とは少し距離があり
彼女が離れていったことによってか
先程から隣でムクムクと感じていた
嫌悪感のような空気が透き通っていく。



「………はぁ、やってらんねぇ」


「…………雪………?」



大袈裟なほどの溜息と共に吐き出された
雪の小さな小さな愚痴は
多分、私にしか聞き取れなかったと思う。

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