恋駅


「あの人、仕事できねー癖に
やたら身なりは気にするよな。
どうなの?あれ。
香水臭いし、近づいてきて欲しくない」


「え、そんなに嫌い?」



珍しい。

雪、言葉遣いは荒いけど
あんまり人の悪口は言わないのに。


相当嫌みたいだ。



「嫌いっつーか、苦手っつーか」


「何それ。
からかわれたりするから?私とかと」


「………いや、そんなんじゃねぇよ」


「じゃあどうしたのよ?」


「だから何でもねぇって」


「それにしては不機嫌過ぎでしょ」


「芹那には関係ないだろ」



キリッとした目で睨まれる。


顔立ちが綺麗だからこそ
余計に迫力があって
有無を言わせなる隙もない。



………はいはい。わかりましたよ、もう。

踏み込んできて欲しくないってわけね。



「………ごめん。もう聞かない」


「ん」



カタカタ。

パソコンに向き直った雪が
物凄い速さでタイピングを始める。

その、硬く無機質な音と
雪の今の心情が重なっているような気がして…



あああ、どうしよう……。


空気が悪すぎる。

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