恋駅


その後、黙々と仕事をこなした結果



「芹那、もう上がり?」


「うん!今日は早く片付いたから」



……まさか、雪よりも早く
ノルマを終えてしまうなんて。


そこまでして、
少しでも早く空くんに会いたかった、とか?


………いやいや、んなわけ。


自分の気持ちが、自分でよくわからん。



「……珍しいな。ちょっと待っててよ。
送っていくから一緒に帰ろ?」


「あーー、今日は平気!!
いつもありがとう!」



雪に家まで送ってもらうのが日常だけど
今日は空くんと約束しちゃったからな。


正直、雪の件も気になるけど……
明日また愚痴でも聞いてあげよう。



「ん?待つの面倒?」



けど、普段雪より仕事が遅いくせに

待っててもらった上、
彼の車に乗っけてもらう私が
自分がいざ早く終わったらこう言ったんだ、

雪が変に解釈するのも納得がいく。



「あ!ううん!そういうわけじゃないの!
……今日、約束あってさ」


「あーーね。
だから早かったんだ?」


「………あはははは」



23にもなって
高校生とのやりとりに浮かれてるのか?


なんとも言えない胸の内を隠しながら
苦笑いでやり過ごすしかできない。



「だから、ごめん。先帰るね?」


「おう。お疲れ様。
気をつけて帰れよ?」



ちょっと後ろ髪引かれる思いだったけど
雪が普段通りの笑顔を見せるから



「うん!ありがとう!また明日!」



申し訳ないけど、今日は甘えよう。

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