恋駅
彼は歩道に背を向ける形で
ベンチに座っていた。
背中越し。
表情は見えない。
「空、くん?」
思い切って、声をかけてみる。
くるっと振り返った彼。
影が彼の顔を隠し
あまりよく見えなくて
私は吸い寄せられるように
空くんに近付いていた。
「芹那さん……。お疲れ様です!」
無邪気な顔が月明かりに照らされた。
微笑む彼に、私も口角を上げる。
「うん、ありがとう。
空くんもお疲れ様」
「はいっ。あ、横どうぞ」
「うん」
空くんが
ベンチのスペースを1人分空けてくれて
私も腰掛けることにする。
………変な空気。
ほんの数本しか生えていない木々
葉が擦れる音。
「まさか本当に
来てくれるとは思いませんでした」
「え、なんで?」
「いや……だって
遊びなら時間の無駄だ、って
LINE送って来たじゃないですか。
あ……信用されてないのかなーって……
まぁ、会ったばっかのこんな奴に
信用も何も無いと思いますけど
ちょっと自信なくなっちゃってて……」