恋駅


「別に私、約束は守るよ?」


「はい、だから嬉しくて。
ありがとうございます!」



まだ幼さ残る笑顔。


私に向けられる視線が熱いのも
なんとなく、伝わって来て
あ、本当に好きなのかな

錯覚させられる。



「俺、芹那さんとは
もっともっと仲良くなりたいんです。

駅で会うだけじゃなくて
自分のことを色々知ってもらいたい。
もちろん、芹那さんのことも知りたい。

おこがましいですけど」



頭をかいて照れたような表情を浮かべ
でも、その眼差しは強く。



「凄いよね、空くんって」



純粋な感想だった。



「凄い、ですか?」



彼の頭上には、
はてなマークがいくつも並んでいる。


よくわからない、って感じだけど



「うん、凄い。
だって全部自分の力で
こういうきっかけ、作ってるじゃない?」



全く見ず知らずの人に告白。
そんなの、簡単にできることじゃない。


一目惚れだと口にする勇気、
会いたいと、連絡を取りたいと、
名前を知りたいと
彼はどんどん私との関わりを
繋がりを求めて来てくれていた。


それが無かったら
私は未だに空くんの存在に
気がつかなかっただろうし

いつものように駅でボーッとしてて
やってくる電車に乗って、
っていう生活を送っているだけだったと思う。


すれ違ったまま
空くんを知ることもなく。



だから。



「私は、空くんの気持ち
素直に受け止めることにする。

まだ好きとか、そういう気持ちは
出会ったばかりだし、よくわかんないんだけど
空くんは本気なんだって
そう信じてみることにする」



雪が、周りの人が
嘘だとか騙されているだけだとか
色々抜かしたって
結局は空くんのことを何も知らないんだから
私が、決めることだから。


わざわざ、こんな面倒臭いやり方で
私を騙し、あざ笑う人じゃないって
なんとなくだけど、そう感じるから。



「ありがとう、ございます……」



うん、ちゃんと信じてみよう。

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