恋駅


それから、色んな話をした。


風間空くんは
私の会社から割と近く
偏差値は平均的な高校に通う3年生。


この間、18歳を迎えたばかりだそうだ。


部活はやっておらず
そのまま進路の時期になり
今は大学受験を視野に入れて勉強中。



「だから最近は机に張り付いてる感じで
身体も動かせてないんですよね」


「受験かぁ。
私は高卒で就職しちゃったから
経験してないんだよね」


「踏み込むのはどうかと思いますが……
就職したってことは、その………」



聞きずらそうな彼。

あぁ、まぁ、そうなるよね。



「大丈夫。お金に困ってるとかじゃないから。
早く大人になって働きたかったの。
勉強嫌いだったっていうのもあるけどね」


「そう、なんですね」


「うん」



これは、本当。


大学に行きたいとか、将来何をやりたいとか
そういう夢、みたいなものが
どうしても見つからなくて。


じゃあ適当な会社に入って
社会勉強しようと就職したところが当たりで
こうして続いてるってわけ。



「空くんは、何か夢みたいなものってあるの?
将来やりたい仕事とか、そういうの」


「はい!ありますよ!」



元気よく答えた彼。



「へぇ!聞いてもいい?」



高校生の夢。


この時期の私は何も抱いていなかった夢。


彼はなんと答えるのか
ぶっちゃけ気になるところ……。

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