恋駅
そして、この日は
いつもとは違う朝が
もう1つの非日常を運んできたんだ。
「あ、あの!!すみませんっ!」
不意に、っていうか、ほんとに突然だった。
電車を待つ長い列の最後尾で
スマホを取り出していた私。
真横に突如現れた制服姿の男の子に驚き、
何事かと顔を上げる。
身長小さめ。
あ、いや、私よりは高いんだけど
男子の中では低い方……165センチくらい?
黒髪で爽やか系イケメン、の彼が、
何故かワンコのようなクリクリの目で
至近距離からじーーっと
こちらを見つめてきていた。
え、っと?私……なのか、これは。
キョロキョロ、辺りを見渡しても
目の前の子と
目が合っているような人はいない。
………てことは、やっぱり私?
見ず知らずの多分近所の高校の生徒。
もちろん、私と何の関わりもない他人、
だと思うんだけど。
あれ、こんな知り合いいたっけ?
私が覚えてないだけ?
頭の中は、ぐるぐる。
「あ、えっと……」
「私、ですか?」
「は、はいっ!」
目の前でモゴモゴ、モジモジしていた彼は
私の問いかけに勢いよく返事をし、
そしてまた、視線をさ迷わせモジモジ。
挙動不審な年下男子高校生。
え、私にどうしろと?この状況……。
なんか、男の子の顔が赤いような気もするし
でも何も言ってこないで
えーーっと、その……なんて繰り返してるし
………んーー。どうしたものか……。