君と永遠に続く恋をしよう
「先週はどうもありがとうございました。両親がとても喜んで、また貴方に会いたいと言ってるんですけど……今夜はお忙しいですか?来れるかどうかを訊いて欲しいと言われたんですが、ご予定は如何でしょう?」


来なくてもいいよ、と胸の中では思いながら、一応建前上は、「お忙しいでしょ?」と訊いてみる。


「今日もまた、社長にご面会予定が入ってましたもんね」


桜庭さんは仕事の関係者だと両親には説明してあるから、なるべく丁寧な口調で会話する。

私の言葉を聞いて彼は、ああ…と返事をして、衣擦れの音をさせながら、それなら大丈夫、と声を返してきた。


「今日は直ぐに終わる予定だから」


そう言うと歩き出したみたいで、微かに声が揺れている。


「先週お父さんとまた飲みましょうって約束したし、今夜も良ければお邪魔させてもらうよ」


あっさりそう決めて、私はつい「ええっ!?」と大きな声を発してしまった。


「無理しなくてもいいんですよ。両親には私から上手く断っておきますから」


焦りながら取り繕う。

これでも受付業務をして長いんだから、上手な断り方の一つや二つは心得てる。

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