君と永遠に続く恋をしよう
顔を合わさないでいるとあの事も思い出さないし、彼のことも考えなくて済む。
このまま時が過ぎていけば、そのうち角川さんも何も言わなくなると思うから助かるんだが。


そのまま金曜日を迎え、いつも通りに定時で上がって社員通用口を出た。

受付の仕事は、アポが多い時は何かと気を遣って大変だけど、ほぼ定時では上がれるし、愛想良く振舞っていればいいんだからやり易い。

しょっちゅう来社してくる営業マンの顔はもう覚え込んでるし、新たな人が訪ねて来ても、顔の特徴を名刺の裏に書いて覚えるようにしてるから何てことない。


(それにいつも明るくて気持ちがいいって言って貰えて嬉しいんだー)


正に天職、と思いながら表通りに出る。
折角の金曜日だし、真っ直ぐ家に直行…というのも勿体ないな。


(たまには外食して帰っろうかなぁ)


誰か誘ってみるか、とスマホを取り出し、電話帳を開こうとした時だ。

いきなり手の中でスマホが震え出して驚いた。
思わず掌から落としそうになり、ぎゅっと掴んだ瞬間、通話を押してしまったらしい。


「もしもし、奈央さん?」


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