君と永遠に続く恋をしよう
絶対にない、と頭の中で断言して、ちょっと映画に酔っただけよ…と納得し直す。


(桜庭さんにしても同じ。私が泣き続けるもんだからきっと同情しただけよ)


私達はお互いに大事な人を失い、今日はその人のことを思い出して、少し悲しみが溢れただけ。


(そう、それだけのこと)


納得する様に頷いてから家に入った。


リビングに置いてある遺影の中の兄は、変わらず優しく微笑んでて、「おかえり」と私に言ってるみたい。


「兄さん…」


貴方はどうして彼に私を勧めたの?
それはもしかして、近い将来、自分がこうなることを予感してた所為?


「だったとしたら切な過ぎるよ」


生きてたら彼に私を勧めたりしなかったの?
それとも、生きていても私の恋人に彼を推薦したりした?


「もう何も聞けないね」


仕様がない。それが別れってものだから。

分かってる…と諦めるように重く息を吐き、遺影に手を合わせてから部屋へ行った。


右手にも唇にも、彼の温もりがいつまでも残ってて、思い出す度に鼓動が増していけなかった__。


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