俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
卵焼きを盗んだ犯人の顔を見て固まってしまった。

助け船を出したのは、要。

「社長…休憩ですか?」
「あぁ、たまには社食でランチしようと思ってな。有坂さん、その卵焼き、俺好み」

「え、あ、ど、どうも」

シドロモドロに答える私を見て、社長はクスッと笑うと、定食ののったおぼんをテーブルに置くなり、何の迷いもなく、私の隣に座った。

…さっきまでの楽しさはどこへやら。

私の顔から笑顔は消え、黙々とお弁当を食べていく。

私のそんな様子を見て、要は何とかその場を乗り越えようと、社長に話しかけては、笑みを浮かべ、そそくさと定食を食べ終わると、私が食べ終わったのを見届けると。

「社長…私たちはこれで、仕事に戻りますので。行くぞ、有坂」

「はい…社長、失礼します」

何とか笑顔を張り付けて、その場を後にする。

…あれ?

一緒に来ていたはずの要がいない。

私は何事かと思い、辺りをキョロキョロしてみたが、やっぱり要は見当たらなくて、私は仕方なく、一人でオフィスに戻った。

…デスクに戻り、腰かけると、マイボトルのコーヒーを飲む。

そして、昼からの業務を再開しようとしたときだった。

「…有坂」

どこからか戻ってきた要が私に声をかけてきた。
< 11 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop