俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
その声に驚いて振り返る。

そして、声の主に更に驚いて、目をぱちくりさせた。

「今日は、残業だったのか?」
「…はい…あの、こちらには何の用で?」

社長が総務課なんかに用事があるわけがない。

「…さっきの携帯、もう一度鳴らしてみて」

社長の言葉に、こ首をかしげながら、さっきの携帯を呼び出す。

「…ぁ」

どうやら、この紙切れの連絡先は、社長の物だったようだ。

「この後の予定は?」

社長の言葉に、どう答えたものかと考えあぐねいていると、しびれを切らせた社長が、私の鞄を片手で掴むと、もう片方の手で、私の手を掴んだ。

「今夜は逃がさないから」
「…どうして」

「…何?」

俯いてしまった私の顔を見ようと、しゃがみこんだ社長は、いつの間にか、両手をそっと包んでいた。

「…どうして私なんかを構うんですか?」

「…なんでだろ?」

「…は?」

思っても見ない答えに、ポカンとなる私を見て、社長はクスクスと笑う。

何だか、イライラしてきた私は、怒った。

「か、からかってるなら、もう二度と、私を構わないでください!」

そう言って、立ち上がろうとした私は、社長に手を引っ張られ、自然と社長の方に倒れこんだ。
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