俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
…結局、食事に行くことになってしまった。

オフィスに荷物を置くと、携帯が鳴る。

「…社長から」

あの日以来、メールも、電話にも、返信はおろか、それに出ることもしなかった。

私は、留守電に切り替え、携帯を鞄にしまった。

…社長に会いたい。声が聞きたい。

そんな衝動にかられたが、何とか飲み込んだ。

…瑞樹との食事中も、どこか上の空で、帰る頃には、瑞樹が心配そうに、声をかけてきた。

「そんなに疲れた、企画部の仕事」
「あ、いえ、そんな事は…」

「今日はもうお開きにしよう。土日はゆっくり休んで」
「…はい。…今夜はご馳走さまでした」

「いいよ、楽しかったし。」

駅までの道を、他愛もない話をしながら歩いていく。

今夜は、私が知らない瑞樹の一面を見た気がした。

「それじゃあ」
「あぁ、おやすみ」

「おやすみなさい」

そう言って、行こうとする。

「…結愛」
「…何ですか?」

「俺には本当に、望みない?」
「…え?」

「俺はやっぱり結愛が好きだ」
「…ごめんなさい。私は…」

そこまでいいかけて、私は言葉を失った。

「…結愛?…結愛、どうした?」

突然涙を流した私に驚いて、瑞樹は私を抱き締めた。

顔だけを、私が見つめた方に、向けた瑞樹も目を見開く。


…大通りの向こう側に、社長と綺麗な女性が、仲睦まじく、宝石店の中に入っていた。
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