俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
「…有坂さんは、僕の補佐役になりました」
「…そんな話は聞いてない」

書類に落としていた視線を、瑞樹に向けた社長。

その顔は、気に入らないと言ってるようだ。

「補佐役が突然の結婚退社になりまして。急きょ、有坂さんに、補佐役をお願いしました」

「総務課長は?」
「勿論、快諾してくださいました。有坂さんも、異動を受けてくれました。…で、いいんだよね?」

瑞樹の言葉に、頷く。

社長はため息をつくと。しばし沈黙。

なんだか重たい空気だ。

「有坂さん」
「は、はい」

社長に呼ばれて、少し声が裏返る。

「仕事が終わったら連絡する」
「え、あ、はい」

…瑞樹の前で言われるなんて思わなくて、困惑する。

「社長…残念です」
「なに?」

瑞樹が割って入ってくる。

「今夜は、企画部のみんなが、送別会と歓迎会をすると、言ってますので、有坂さんは渡しませんよ」

そう言った所で、エレベーターのドアが開いて、瑞樹と私は降りた。

「それでも、連絡するから」
「結愛は渡しませんよ」

そこで、無情にもドアは閉められた。
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