俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
…それからしばらく、笠原家に滞在し、その後、送ると言われたが、丁重にお断りして、自宅へと帰る。

本当は、もっともっと社長と一緒に居たかった。

でも、二人を見ていたら、私がそこに居てはいけないと思えて…

あぁ、私ってどうしてこうもマイナス思考なんだろうと思うけど。

子供の頃からずーっと、色んな事を諦めていたせいか、この考えがやめられない。

「待て、結愛」
「…っ?!」

駅の改札口に入ろうとした瞬間、誰かが私の肩を掴んで呼び止めた。

振り返った私は驚く。

「一緒に行くぞ」
「え、いや、ちょっと、社」

最後まで言う前に、社長が私の口に手を当てた。

「公共の場所で、その呼び方は良くない」
「…ぁ」

「良樹」
「…」

「ほら、早く」
「~っ!…良樹、さん」

「うん、それでいい」

初めての呼び方に、私の顔が赤くなる。

良樹はそんな私の顔を見て、クスクスと笑いつつ、私の手を引いて、改札口を抜け、電車に乗り込んだ。

「良樹さん、あの、どこへ?」
「結愛の家だけど」

「えっ?!」
「結愛は言ってくれないけど、俺は結愛と一緒に居たかったから、ついていく」

「なっ、私だって」

一緒に居たかった。

どうしても言えなくて…

「結愛が言ってくれないなら、俺にも考えがあるから」

「…」

そんなこと言われると、不安になる。
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