俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
コーヒーを飲み終え、会計に向かう。

レジの前。私は鞄の中から、財布を取ろうとする。

社長は怪訝な顔で私を見下ろして一言。

「何してる?」
「え、あ、お財布を」

「俺に恥をかかせるつもりか?」
「…ぇ、」

その言葉にハッとする。

彼は、笠原商事の社長なのだ。

平社員でぺーぺーの私が払うなんて、恥をかかせるだけだ。

私は慌てて鞄から手を抜き、申し訳なさそうな顔で謝罪する。

「…すみません、ご馳走になります」

私達のやり取りが可笑しかったのか、店員はクスクスと笑っている。

私はただただ俯くしかない。

社長はカードで支払うと、シュンとしてる私の手を再び掴むと、ゆっくり歩き出した。

助手席に私を乗せると、自分はまた運転席に乗り込んだ。

「家はどこだ?」
「○○です」

場所を告げると、社長は車を出して目的地へと走り出す。

…居たたまれない、この状況。

音楽が流れるわけでも、会話があるわけでもない。

私は窓の外に視線を移し、景色を見つめるしかなくて。

…やっと解放される。

自分の住むアパートが見え、ほっとした。

「俺と居るのが、居心地悪そうだな」
「そ、そんな事は」

ある!あるけど!…あるなんて言えるわけないでしょ?
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