俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
車が、アパート前で停まった。

「ご馳走さまでした!色々ありがとうございました!おやすみなさい!」

捲し立てるようにそう言って、車のドアに手をかけると、急いで車から降りようとした。

が。

…なぜ?

私はがっしり手首を掴まれている。

恐る恐る社長に視線を向ける。

「あの?」
「有坂結愛」

…ぺーぺーの私の名前を知ってるとか、流石は代表取締役社長。

私は少し痛いくらいの手首に視線を落とす。

「…社長…痛いです」
「悪い…携帯の番号とアドレスを」

「プライバシーの侵害です」
「上司命令」

「…」

困惑顔で社長を見る。

「教えないと、離さない」
「…わかりました、教えますから離してください」

と、見せかけて、離したことをいいことに、私は急いで車から降りた。

「結愛!」
「もっと仲良くなったら教えます」

なんて、捨て台詞をはき、私はアパートの中に逃げ込んだ。

もっと仲良くなったらなんて、あり得ない。

彼は社長で、私はただの一社員でしかないのだから。

そう思うと同時に、さっきの社長の切なげな顔を思い出す。

…胸が締め付けられるのは何故なのか、今の私にはわからない。
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