俺様社長の溺愛~大人の恋を指南して~
「何を言い出すんですか、西園寺専務」

私を守るように、一歩前に出てそう言った社長。

「その理由は、貴方が一番よく知ってる筈ですよ、笠原社長」

「…」

その言葉の意味が理解できず、悠翔を黙って見つめるしかない社長は、掴んでいる私の手を無意識に強く握った。

「今日は、この契約内容を読ませていただいたので、話に来たのですが、西園寺はこの契約内容に異論はありませんので、全て笠原にお任せします。大事な書類はこの中に」

そう言うと、私の目の前にやって来た悠翔は、茶封筒を私に手渡した。

私は、前回の事を思いだし、萎縮する。

すると、悠翔は困ったような笑みを浮かべると軽く頭を下げた。

「この前は私の無礼を働いたこと、心より謝罪します…ですが、笠原社長の貴女に対する態度は、私としては賛成いたしかねます。笠原社長は、何を言ってるのか、わからないと言った顔ですので、ヒントだけ。西園寺優子の存在はお忘れですか?」

西園寺優子?

その名前を言った途端、社長の顔色が変わったのは直ぐに分かった。

「有坂さん、貴女を優子と同じような目には遭わせたくないのです。ですから、笠原社長との関係は終わりにした方が懸命ですよ」

そう言い残し、悠翔はその場を去っていった。

私はいいようのない不安の波が押し寄せた。
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