皇帝陛下の花嫁公募
 最初から明日披露すると判っていれば、リゼットももう少し無難なものを言っておいたはずだ。

 できれば、皇妃に必要なことを。

 しかし、そもそも皇妃とは何をするものなのか。リゼットの頭の中には、公式行事などのときに皇帝の隣で着飾ってにこにこしている図しか浮かばない。そして、子を産み、育てること。

 皇帝は自ら兵を率いて戦うことが好きだという。だとしたら、皇妃は宮殿の贅沢な部屋で、女官相手に退屈そうにおしゃべりするだけでもいいのかもしれない。母妃は王妃でありながら、城の外に出ていっては、困った人達に手を差し伸べることを生き甲斐にしている。

 もしわたしが花嫁に選ばれたとしたら、どんな人生を歩むことになるのかしら。

 まだ皇帝に選ばれてもいない。いや、その前に最終候補にも選ばれていないが、皇妃としての生活を想像してみた。

 だいたい、わたし、まだ皇帝の顔も知らないわ。

 噂話から、なかなかの美男子で、少し変わり者だということだけは伝わってきた。

 でも、孤児院をつくる人なんだから、変わり者でもきっといい人に違いないわ。

「とにかく、明日に備えましょう」

 リゼットはナディアと共に、祖父の屋敷に帰った。
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