皇帝陛下の花嫁公募
 翌日、リゼットが宮殿の大広間に行くと、そこはピリピリとした雰囲気になっていた。

 今日が最終試験だから……。

 少し人数が減っているところを見ると、花嫁になることを諦めた人達もいるようだった。試験を上手くこなせなかったか、もしくは自分に合わないとやめた人もいたかもしれない。

 残った娘達は皇妃になる野心があるようで、上品そうに見えていても、心の中は違う。いや、リゼットも野心があるわけだから、他人の批判をしているつもりはなかった。

 すべては今日で決まる……。

 それぞれ得意なものを披露する。という話だったが、見物人がいるという話は聞いていなかった。いつものように審査をする女官の前で披露すると思っていた。せいぜい、花嫁試験に臨む者だけの前だろうと。

 ところが、宮殿で働く女官がみんな集まったのではないかと思うくらいたくさんの見物人がいた。歌や朗読、楽器が得意だと言った娘は、その見物人の中で腕前を披露しなくてはならなくて、声が震えたり、音を外したりして、さんざん目に遭っていた。

 だから、刺繍などの手作業が得意と言った娘は、少し気が楽だったはずだ。見つめられても、それほど動揺せずに済んだと思う。

 他に外国語が得意だと言った娘は、やはり声が震えていたものの、なんとかみんなの前で一人でやり遂げた。
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