皇帝陛下の花嫁公募
 彼は一瞬、何も言わなかった。が、すぐに息を長く吐いた。

「もし君が選ばれた場合は……」

「もちろん結婚することになるわ。わたしはそのためにはるばるここまでやってきたんだもの」

 冷淡なように聞こえるかもしれないが、そうとしか言えない。

「もし選ばれなかったら?」

「家に帰るわ」

「そして、父親の決めた相手と結婚するのか?」

「ええ……。でも、最初からそう言っていたでしょう?」

 アロイスはリゼットの手を握った。

 力強く温かい手。リゼットはこの手が大好きだった。

「リゼット……。初めて会ったときから、俺は君に何かを感じていた。ここ何日かずっと会って話をしたことで、気持ちはより大きくなってきたんだ」

「ダメよ、アロイス。そんなこと言われても……」

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