皇帝陛下の花嫁公募
 こうして会い続けたことはやはり間違いだったのかもしれない。最初から自分が帝都に来た目的は告げていたはずだし、それでも彼はここに通っていたのだから、それに関しては納得してくれているものだと思っていた。

 だって、彼は試験のことで励ましてくれてもいたのに。

 それを今になって、リゼットの気持ちを揺さぶるようなことを言い出すなんて……。

 リゼットの気持ちは元々揺れていたのだから、彼がそんなことを言うと、もっと揺れてしまう。

 でも、いくら揺れても、どうしようもないのよ。

 彼には判らないかもしれないが、国を背負っているのに、個人の感情など差し挟む余地はないのだ。

「君が皇帝と結婚しなくてはならないと思い込んでいるのは判っている。だが、他の道もあるんじゃないか? ここ数日の間、俺と一緒にいて、ちらりとでもそんな考えが起きなかったと言えるか?」

「それは……それは……」

 確かに言えないが、かといって、彼と同じことを考えたとも言えない。彼に無駄な期待を抱かせることになってしまう。

 いっそ、彼のことをなんとも思っていないならよかったのに。
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