皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットにとって初めてのキスだった。

 優しくしっとりとしたキスをされ、リゼットは眩暈のような幸せを感じた。

 束の間、その幸せに酔いしれる。愛し合う二人が交わすキスは、将来の幸福が約束されたもののように思えた。

 でも……。

「ダメ……!」

 リゼットは無理やり身体を離した。

 本当はもっとキスをされたかった。もっと抱き締められて、彼の温もりを感じていたかった。

 できることなら、彼の求婚に応じたい。

 だが、王女としての義務感が勝った。

「どうしてダメなんだ? 俺では身分が不足なのか? 父親の言いなりになる必要がどこにある?」

「そ、そうじゃないの……」

「すべて俺に任せてくれ。君の父親がなんと言おうと、説得する自信はある」

 リゼットは追いつめられていた。
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