皇帝陛下の花嫁公募
 なんとか彼に帰ってもらわなくては。そうしないと、彼の求婚を受けてしまう羽目になるのは間違いなかった。

 だって、本心ではそうしたいんだから!

 けれども、そうはできない事情がある。彼になんとか判ってもらわなくてはいけなかった。

「わ、わたしは……皇帝と結婚しなくては……。皇帝でなくても、裕福な人と結婚する必要があるの。両親もみんなそう望んでいて……!」

 アロイスの目はカッと見開かれた。

「金だって……!」

 彼は吐き捨てるように言うと、まるで汚いもののようにリゼットの手を離して、立ち上がった。

「君が金のために身を売る覚悟だったとは知らなかった!」

 軽蔑したように言われたことがつらかった。

「そうじゃなくて……」

「どういう意味だと言うんだ? 俺は君を見誤っていた。君が花のように清らかで、父親の命令に逆らえないだけかと思っていたのに。君は金目当てに結婚する気でいながら、俺と少し火遊びがしたかっただけなんだな?」
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